日本史の教科書は男性目線 part1
以前、大学の授業をきっかけに高校日本史の教科書の記述について調べたのですが、
改めて読むとその内容がかなり男性的な視点に偏っていて驚きました。
教科書はついつい「テストの答え」として、あまり考えることなく暗記してしまうものかもしれません。僕も実際に調べてみるまで疑問すら抱いていなかったので、何回かに分けて一部でも紹介できたらと思います。
ここで参照するのは、山川出版の『詳説 日本史』です。多くの高校生がこの教科書で勉強しているようで、僕もこれを使っていたので参照します。
今回は、明治時代の「四民平等」について。
明治時代といえば、「明治維新」と銘打って日本のありとあらゆる制度や文化を西洋化しようとしましたよね。当時影響力の強かったイギリスやドイツ、フランス、アメリカなどの「列強」と呼ばれる国々に追いつけ、追い越せと改革を進めました。
その中でも日本が遅れていたのが、身分制度。
列強諸国では、人は「個人」として見られ、どのような家柄に生まれようと好きな職業を選ぶ権利や、教育を受ける権利などが(一応は)存在していました。
一方、日本では「貴族」「武士」「農民」「商人」のように身分が分かれており、
農民の家に生まれた者は農民を継がなくてはならないというように身分が固定されてしまっていました。
つまりどれだけ能力があろうと本人の希望は全て無視。全ては家のため。将軍様のため。これは辛い。
そこで、日本政府は「列強みたいに身分無くして近代国家であることをアピールしよう!」と「四民平等」を打つ出したのです。
それに関する教科書の記述がこちら。
「男女の差別はあったが、同じ義務を持つ国民が形成された。」(p265)
一見、男女の差別について認めているので良いかもしれませんが、「四民平等」についてはこれくらいしか書かれていないんです。
むしろ、「身分制度も無くなったし、これでひとまず平等が実現されましたね」というハッピーエンド的な書き方をしているとも取れるでしょう。
男性の中でも、かなりの高額を納税した者にしか選挙権は与えられず、女性にいたってはまるで「モノ扱い」も同然だった当時の状況を見ると、とても「同じ義務を持つ国民が形成された」とは言い難いでしょう。
確かに「義務」自体は文面上同じものが課せられていたかもしれませんが、「権利」に関しては全く平等ではなかったはずです。
このように、今後も日本史の出来事・記述についてジェンダーの観点から紹介していきますが、教科書は徹底して人種や性別、身分による差別に関する記述を避けています。深入りしすぎると、様々な解釈があって議論になるとは思うのですが、「実態」に対して何も知らないまま大人になっていきます。
せめて、問題意識を芽生えさせるような記述だけでもできれば…。
根本的な変化は、学習指導要領まで変えないと無理ですからね。
ちなみに、先ほどの教科書の記述を自分なりに書き換えるならこうします。
「これらの身分制改革は、近代的な西欧諸国に倣い同じ義務をもつ国民の形成を図った。しかし、依然として女性の権利は軽んじられ、男性中心の社会だった。」
こんな風に内容自体は変えずとも、書き方を変えるだけで「こういう問題があったのか」という視点を導くことができるのではないでしょうか。
参考
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